山場を迎えた八ッ場ダムの住民訴訟

ダム建設に必要といわれる2200㎥の水量の虚構が明らかに

八ッ場(やんぼ)ダムは利根川流域の群馬県長野原町の名勝吾妻渓谷に1952年に計画され、いまだに本体工事は未着工です。国土交通省が事業主体で茨城、群馬、埼玉、千葉、栃木、東京の1都6県が参画しています。2004年の9月には国交省は八ッ場ダムの2度目の計画変更を行い事業費2110億円から4600億円に増額しました。このとき都議会で生活者ネットワークは反対しましたが、東京都知事は都民の負担増となる計画を容認してしまいました。(東京・生活者ネットワークのHPで2003年12月15日の反対討論をご覧ください)
この巨額の費用は国税として一般国民に、都県民税、水道料金として首都圏の住民の肩に将来にわたって重くのしかかってくることになります。

  2004年11月に八ッ場ダム関係6都県で一斉に八ッ場ダム事業への公金支出差し止めと水利権利獲得放棄を求める住民訴訟を行い、今その最終局面を迎えています。
7月30日(水)に行なわれた裁判を娘と傍聴しました。6月20日に続き2回目の証人尋問が東京地方裁判所で行なわれました。原告側の証人として利根川の治水研究の第一人者、元新潟大学教授の大熊孝さんが立たれました。原告側の弁護士がパワーポントの資料を指し示し、証人が答えるというやり取りが1時間30分ぐらい続きました。専門的な話が多かったので良くわかったとは言えませんが、このダムが必要ないということは良くわかりました。台風が来ると2,200㎥の水量が発生して洪水を起すのでダムは必要という国交省の主張は間違いで、実際には1,500~1,700㎥の水量であることが尋問により明らかにされました。しかも総事業費は約5000億円にもなり日本一高額なダムになります。

原告側の証人尋問、続いて反対尋問が行なわれ、この後で裁判長と弁護人の間で今後の判決までの日程調整のやり取りがありました。原告弁護人のもう少し時間をかけてという要望に対して、被告代理人と三者で年内結審に努力してきたことを無効にするつもりか!!と裁判長がムキになる場面も見られ、原告側と裁判長との思惑が見え隠れする駆け引きがありました。裁判終了後、弁護士会館の会議室で尋問のなかで明らかにされたことや裁判長とのやり取りが弁護士さんから説明されました。年内結審、3月ぐらいに判決ということになるのだということです。他の5県の裁判の行方も気になるところです。

国交省の洪水の流量予測の根拠も崩れ、節水機器の普及で水余りであるにもかかわらず、東京都も過大な水需要予測を改めようとしません。ダム計画も道路計画も一度計画したら不要であっても作るという官の体質を国民の力で変えなければ無駄な税金が使われ続けます。市民は無関心ではいられません。(井上八重子)

写真 裁判終了後会議室で裁判の解説が行なわれた。左端が元新潟大学教授の大熊孝さん、立って話しているのが弁護士の只野さん。