性差医療と検診の必要性

女性のライフスタイルは女性ホルモンに密接に関係している

戦前は女性のライフスタイルは初経を迎え、出産をし、閉経すると60歳代ぐらいには寿命を迎えていました。しかし現代ではすっかりとライフスタイルが変わっています。思春期の初経後、高学歴で職業を持つようになり、出産年齢は平均30歳前後、合計特殊出生率も1.26と減少。多産であれば、妊娠・授乳期は無月経ですが、出産数が少ない現在は当然月経回数が増え、閉経後も平均寿命は85.9歳と長い人生が残されています。

ライフスタイルが思春期、成熟期、更年期、老年期と変わる中で、月経異常、妊娠と避妊、子宮頸がん、更年期障害などさまざまな症状がおこり、それに合わせた保健ニーズが発生します。こういった症状は女性ホルモンの動きに起因していることは明らかで、一生を通じた女性ホルモンの分泌が女性の身体にどのような影響を与えるかという知識を正確に伝えていくことが、検診率のアップに繋がることを改めて確認する機会を得ました。

銀座で総合女性外来を開業する産婦人科医の対馬ルリコ先生は性差医療をキーワードにあげていました。これまでの医療は男性を対象に研究され、発展してきましたが、女性と男性では生物学的にも内分泌的にも性差があり、男性と同じ薬が、女性には害になることや、同じ疾患でも症状の現れ方や治療への反応性や予後が異なることなどが分かってきました。セックス(生物学的性差)やジェンダー(社会的性差)を考慮した医療が求められているのだといいます。

女性のがん罹患率は乳がん、子宮ガンが増加しており、特に子宮頸がんは若い女性に増えています。この子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)が原因でワクチンが開発されていて、ワクチン接種と検診で予防できる癌です。しかしながら子宮頸がんの検診受診率は世界平均58.8%に対して日本は23.7%です。
「HPV」の認知度も米国は57%、豪州は32%、日本はたったの10%です。知識があれば救われる命や望まない妊娠や性感染症などの予防にも、早い時期の教育が求められます。人生を考える教育として正確な科学的知識を教える性教育が10代から必要です。

自治体には検診率のアップだけではなく、女性自身の健康管理を含めて、健康が基本的人権なのだということを広く啓発していくことを求めたいと思います。(井上八重子)