在宅介護者支援が研修とは

予算特別委員会質疑

実家の梅の実。今年はたくさん収穫できそうです。
実家の梅の実。今年はたくさん収穫できそうです。
 在宅で介護をされている家族の心労をねぎらう目的で行う「在宅介護者激励研修」について、事業の始まりと評価について予算特別委員会で質しました。事業開始は昭和58年(1983年)、で事業内容も変わっていない、参加者からはたいへん喜ばれているとの高齢者福祉課長の答弁でした。社会状況が大きく変わる現在、30年近く見直しがされていないという事業内容に唖然としました。市民の意見を反映するしくみの必要性を改めて感じました。

 2000年に導入された介護保険制度は5年毎の制度の見直しと65歳以上の1号被保険者の保険料の改定を3年毎に行うことが法で定められています。2回目の改正は2010年ですが、前回の改正では軽度の介護認定者は介護予防に重点を置くことになりました。さらに家族が同居の場合、給付が制限されるような事例も起こり、介護の社会化が後退しています。
   
 在宅で介護をされている方たちの精神的・肉体的な負担軽減の支援は見逃されがちですが、たいへん重要な課題だと私は認識しています。品川区の在宅介護者の支援には「激励の集い」「宿泊研修」「日帰り研修」があります。20箇所の各在宅支援センターが介護技術の研修を別事業としてすでに行っているのに、いまだに「在宅介護者激励研修という名称」で行われていることに、行政の意識の遅れを感じます。

 数人の方にこの事業についての聞き取りもしてみました。「在宅で介護をしているというだけで見ず知らずの方と旅行しても楽しいとは思えない」「一度激励の集いに参加したが、家族が心配で早く帰ることを考えた」「亡くなって表彰状いただいても・・・」「介護に疲れて、参加したいという前向きな気持ちが持てない」というものでした。私が聞いた方の声ですので、いいえ評価できますという声も当然あると思います。
しかし、区には漫然と事業を行うのではなく、当事者の声をしっかり聞き取り、予算額1000万円を有効に活用するよう求めました。

 家族、とりわけ妻や嫁といわれる女性だけが担ってきた介護は、老老介護や男性の介護も珍しくない社会となり、20年前とは介護を取り巻く環境が大きく変わっています。在宅介護が長期化して、抱えすぎた不幸な事例も起こっています。介護者の研修事業という名称自体を変えて、当事者にアイデアを募集して、心のゆとりとやすらぎが実感できる内容で実施していく事が在宅介護者の支援に繋がります。(井上八重子)