高齢化社会の迎え方~スウェーデンの事例~

(左)スウェーデン研究家の藤原瑠美さん(右)元スウェーデン大使の藤井威さん

スウェーデンの人たちの『自分のことは自分で決める。自分でできないこと、決められないことはコミュニティ・行政が支える』という考え方が高負担を容認し、高福祉社会を支えている。

では、急速な高齢化を迎える日本、そして私たちのまちは介護という社会サービスをどのように再構築していったらいいのか。その答えは市民の自治、市民の意識改革であるということを理解した講演会でした。 

413日(土)にスウェーデン研究家の藤原瑠美さんと元スウェーデン大使の藤井威(たけし)さんのお話を聴く機会を得ました。ここでは藤原さんのお話について報告しようと思います。

藤原さんは介護保険導入前、働きながら10年間実母の介護をした経験から、スウェーデンの介護現場の研究を始めています。スウェーデン南部のエスロプ市スコーネというところに8年間で8回、計260日滞在したそうです。

スウェーデンの大きな転機は1992年のエーデル改革。長患いをしない方法に着目し、①廃用症候群にさせない②社会参加をすることを実践しています。(※廃用症候群…起き上がれない、歩くことができない)

スウェーデンでも1970年代では認知症高齢者は精神病院に入り、1980年代では療養病床で拘束も行われ、高齢者を医療が取り込んでいる日本の状況と変わらなかったそうです。しかしエーデル改革によって、低コストだけではなく、人権を大事にするという在宅志向という考え方が優先され、過保護にしない、どこに住んでも自宅〈24畳に台所とシャワールーム〉が徹底されるようになりました。

できることは自分でやる。できることできないことを棚卸して、できないことだけをポイント援助するので、介護メニューはありません。その人にあった支援がされます。他方高齢者の意識も、老いては子に従えで家畜小屋のような所に住居を移して暮らす時代から、『自律・自立と連携』と意識変化が起こっています。ひとり暮らしは自分の生活ペースが守れるため、二世帯同居も少ない現状があります。

同居しなくても家族関係が良好というスウェーデンの話を聞きながら、品川区の親元近居支援事業は完全にスウェーデンの社会サービスの考え方に逆行していると思いました。

 藤原さんのお話を伺って、私は『一人でも暮らせる高齢者を育てることが重要!!』であるという結論に至りました。私は介護をしていますが、私たちの世代が、高齢期を迎えたらどう生きたいのか考える時期に来ています。社会支援を受けながら一人でも生きられる人になりたいと思います。介護が必要になったら男性の8割の人が配偶者に介護してほしいと考えています。ここも意識改革が必要ですよね。(井上八重子)