東京五輪に浮かれる前に、冷静に優先順位を考えよう

2020年の夏季五輪が東京に決まった。子どもたちにスポーツの祭典の素晴らしさを経験させてあげられるチャンスを大人が奪ってはいけないというようなことを何度となく聞かされた。オリンピックには夢と感動があることは百も承知だが、福島原発爆発事故と東日本大震災復興を優先すべきだと反対してきた。8日早朝「東京に決定!!」にまさかという思いしかなかった。 

五輪招致委員会によると五輪予算が7340億円、予算の内訳は組織委員会予算が3013億円、大会施設の整備費3855億円、新国立競技場建設費は1300億円、選手村の建設費1057億円などと建物整備に4千億円以上のお金が投入される見込みである。老朽化した道路整備など7年間でクリアしなければならない課題は多く、どれだけの税金が投入されることになるのか見えない。 

東北震災復興を前面に掲げての招致だというが、復興の進捗を遅らせる要因となるのではないかと危惧する。現在でも東北3県では復興事業に必要な作業員や資材の慢性的な不足で事業の受注業者が決まらない入札不調が続いているという。こういった中で東京五輪を理由に首都圏のインフラ整備が優先されれば、人手や資材の不足はさらに悪化し、仮設住宅で暮らす被災地の住宅再建などを妨げる結果にもなりかねない。 

安倍首相は世界に向けて、福島原発の汚染水漏れはコントロール下にあると言っているが、対策予算も470億円しかない上に、汚染水漏れをストップさせる技術もまだ見つかっていないという状況に開いた口がふさがらない。 

首相が「問題はない」と断言した汚染水漏れの拡大や健康への影響について、うそつきと非難しても後の祭り。「安全で確実な五輪を提供できると期待していただいた。首相として責任を果たす」と国際社会に向けて発信してしまったのだから、その責任を果たしてもらうように監視するしかない。五輪の責任は、震災復興と原発爆発事故の解決の道筋ができて初めてはたせるのだと確信する。

東京五輪と国土強靭化の名のもとに東京に何でもありの公共事業にならないように国民の厳しい目が必要だ。(井上八重子)