NSAとは障がいのある人と障がいのない人が気兼ねなく関われる社会、心のバリアフリー社会を実現することを目的に活動しているNPOです。
活動の一つに視覚・聴覚・運動・精神などの障がいの理解を深めるためのセミナーがあります。今年のセミナーは「見た目で分からない障がい者とのコミュニケーションを目指して」と題して行われました。内容は見た目ではわからない障がい者を取り巻く現状を、障がい者当事者と障がい者を雇用する健常者の両者の講演とシンポジウムでした。当事者の立場から筑波大学大学院の弱視の相羽大輔さんと同大学院の聴覚障がいがある窪田祥子さん、不動産会社に勤めている聴覚障がい者の大江亜沙子さん、発達障がいのあるもびぃさん(ハンドルネーム)がお話され、障がい者を雇用する立場から読売新聞社人事部の野中武生さんが話されました。相羽さん、窪田さん、大江さん、もびぃさんもみな見た目では障がいがあることはわかりません。
見た目ではわからない障がい者の多くは健常者として扱われてり、障がい者として扱われたりするため、どっちつかずの状態で「障がいを理解はしてほしいけれど普通に扱ってほしいと」ということに悩んでしまう。一見すると振る舞いが健常者のように見えるため、できること、できないことや支援のニーズが理解されにくく、誤解もされてしますという問題を抱えています。例えば白杖をもっている方に席を譲ったら、その人が本を読んでいて嘘をついているように誤解された。視野狭窄の方は中心部が鮮明に見えるので本を読むことはできます。白杖イコール全盲と思いこまれている方は少なくありません。難聴の方は訓練によって話すことができますが、聞き取りにくいのでゆっくり話してというと「なぜそんなことを言い出すのか」と不思議がられます。誤解を避けたいという思いから、聞こえなくても聞こえた振りをすることで対人関係のトラブルになったり、当人に過度のストレスかかってしまいます。耳が聞こえないと障がいの開示をすれば、適度な関係性を築けると頭では分かっていても、それにはメリットもデメリットもあるので躊躇してしまうのだそうです。メリットは誤解やトラブルを事前に回避できる。デメリットは相手に構えられる。一歩間違うと自分の望むサポートでないものを提供される危険性も含んでいる。
障がいのある人にもない人にも不安と思い込みがあって難しい問題です。しかし障がいのない人が見た目で分からない障がいについて知ろうと関心を持つことは、心のバリアフリー社会に一歩近づきます。
NSA理事長の相羽さんは「今日のセミナーで歩み寄りの一歩を踏み出し、見た目でわからない障がい者の方と周囲の方が、学校や職場、地域社会においてよりよい仲間になれることを切実に願っています。」と終わりの挨拶を結びました。(井上八重子)