長期ビジョンからバックキャスティング

第16回とことん討論会@大田

第16回を数える、とことん討論会は今年は大田区のメンバーが実行委員会の中心を担っています。8月5日(金)大田消費者生活センターを会場に全体会、分科会と熱い議論が行われました。

全体会のゲストスは、自然エネルギー推進の急先鋒、NPO法人「環境エネルギー政策研究所」(ISEP)から松原弘直さん、そして原発に頼らないを宣言し、省電力を応援する新たな金融商品を発売した城南信用金庫理事長の吉原毅さんです。
 
3.11が起こる1週間前の3月4日に設立10周年パーティーを行ったというISEPですが、最近の報道に登場する回数をみても、このNPOへの市民の期待が大きくなっているのを感じます。朝日新聞世論調査では脱原発依存宣言をした菅首相を評価するという人が61%、次の首相も脱原発依存を引き継ぐべきという人も7割います。国策で進められてきてしまった原発ですが、持続可能な再生エネルギーを求める世論は確実に拡大しています。

ISEPの持続可能な再生エネルギーの提言に「長期ビジョンからバックキャスティング」というのがあります。目指す社会の実現のためのシナリオは現在から未来に向けてと考えるのが一般的ですが、バックキャスティングとはビジョンを明確にして、未来から現在に向かってシナリオをつくるという考え方です。

例えば原子力を全廃すると決めたら、どうすれば実現できるのかを考えるのです。生活の場を失う原発ではなく、一時的には火力発電で対応する、自然エネルギーを導入した企業に公的融資や税制の優遇策を設ける、家庭で設置しやすくする助成を拡大する、発電した電力を電力会社が固定価格で買い取る、電力の地域独占をさせないしくみをつくるなど、政治を使って誘導策を駆使するのです。原子力産業に群がる政治(議員)集団ではできないのなら、国民は黙っていないという姿勢を見せなければならないのだと松原さんの話を聞いて思いました。

それを実行にているのが、城南信金理事長の吉原さん。金融機関というツールで地域貢献活動を実践していると自負する吉原さんは、3.11の震災であぶくま信用金庫の惨状を見て、原発が大切な地域を破壊してしまっていること、大企業(東京電力)が地域のことを考えない姿勢が見られたことが脱原発の宣言になったといいます。広報部門の部署が長かったので、得意とする新聞でのアピールのエピソードで語られました。懇意にしている読売新聞記者は反応なし、原発記事を多く取り上げている朝日新聞には、取材は受けたが音沙汰なし、後で朝日も読売と同じく、原発の情報規制がすごいということを知って、背筋がぞっとしたとおっしゃっていました。4月20日に東京新聞が1面トップで取り上げた姿勢に敬服し、他社から東京新聞に契約を換えたと笑っていました。

同氏は原発が無ければ電気が足りないとか原発の電気が一番やすいとか報道によってマインドコントロールをされていると指摘。直接原価と間接原価があるのに、発電後の核廃棄物の処理コストや事故による保険コスト、設置自治体への奨励金はコストにあらわしていません。火力発電は高いと吹聴していますが、燃料は輸入で原価が高騰すればコストがあがるのは当然です。

自らが正しい情報を収集する力を付けること、そしてエネルギーの問題を人任せにしないこと。そいったことを一人ひとりが考えていきましょう。(井上八重子)