競争社会・競争教育が生み出すもの

「ひきこもりつつ育つ」と題したセミナーに参加しました

6月10日日曜日の午後、NPO法人教育サポートNIRE主催の「ひきこもりつつ育つ」と題したセミナーが中小企業センター大講習室でありました。同NPOは2005年設立の発達障害など特別な教育ニーズのある子どもたちの教育支援や体験を通した仲間づくりを応援しています。

全国で70万人がひきこもる社会、そして自殺者が毎年3万人以上もいる社会。

どんな社会状況からこのような社会が作り出されてきたのか。講師の山本耕平先生(立命館大学産業社会学部教授)の社会分析の内容に納得し、共感した。和歌山県のNPO法人エルシティオという作業所の運営にもかかわり、若者支援を実践する当事者だからこそ、現場を持たない研究者の言葉より、哲学と方法を間違ってはならないというお話が心に染みた。無理やり引っ張りだす支援が不幸な事件を引き起こしている。

主体形成ができる居場所支援。一歩前を歩む仲間(ピア)との出会い。「何かして欲しい」から「何とかしたい」という主体的な立場への変容。体験・経験の蓄積。
ひきこもりつつ育つ支援、大変重い課題ですが、ほんの少しだけ学ぶことができました。

人たる価値を否定する競争と評価
「できない」とは、たかだか能力の差に過ぎなかったのに、現在の人間評価は、人たることの価値(それぞれの生の価値)にまで公然と差を付け、そうすることで生の尊厳を根底から傷つける。ありていに言えば生命の価値には違いがあり、生存権には平等などそもそも認められない。競争社会はそういう性格を持っている。(中西、2009)

んん~~つまり、「できない事」を指摘して、その事象を「人格否定」にすり替えている。
身近なところで、私の子育てを振りかえりました。

例えがヘンかもしれませんが、たとえば、算数のこの問題が解けない=だからあなたはダメ!的なことを威圧的に子どもに対して私は言っていなかっただろうか?

家庭や学校や職場で、能力を公然と差別され、生の尊厳を傷つけられたとしたら心が折れてしまうだろうな。そしてそこから逃げ出そうとする子どもや若者がいても当然だろう。その結果が生きづらさを抱えてひきこもる70万人を生み出しているとしたら辛いですね。

国連の子どもの権利委員会は2010年6月の総括所見でも「日本の教育の過度の競争と高度な競争的学校環境の中で子どものいじめ、精神障害、不登校、中途退学及び自殺を助長している可能性がある」と指摘し勧告しています。
競争社会、競争教育を早急に見直すべきだと思います。(井上八重子)