障がい者差別解消法は条例をつくらいないと活かせませんよ
2014年6月2日(月)午後、品川区育成会の定期総会後に開催された野沢和弘さんの講演を聴かせていただきました。話を聴きたい講師ベスト3でしたので育成会さんに感謝です。
野沢和弘さんは毎日新聞社論説委員で、千葉県の堂本知事のもと、紆余曲折の末に施行された差別禁止条例(正式には「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」)の基礎をまとめた「障害者差別をなくすための研究会」の座長でもありました。
重度の知的障害児の父として、27歳になる自閉症の長男とのやり取りには、そうそうというようにうなずきながら聞く姿が見られました。また新聞記者として取材で見えてきたことなど伺いました。大学で障害福祉を学び希望に燃えて就職した施設で、理不尽な扱いを受けて辞めざるを得なくなった若者、障がいゆえに被害を被害として理解できず性的虐待が繰り返されたケースなど耳を覆いたくなる話もありました。
国ごとに制度は違う。たとえば、オランダでは障がいのある子を持つ親は国家公務員扱いで年収600万円ほど給料が支払われる。しかし税は200%というように100万円の車に200万円が課税される。
他方、日本は家族が基本。「障がいがわかる家族がみる日本を気に入っている。しかし家族だけでは担いきれない。だから『親が安心して手を離せる社会』がいいですね。」と野沢さん。障がいのある人もない人も親が安心しては同じ思い。みんなで知恵を出し合いそんな社会をめざしたい。
私は暮らしやすい千葉県づくり条例の策定プロセスをまとめた著書「障害者条例を必要としているあなたへ~たったひとつから全国のまちへ~」(出版社/株式会社ぎょうせい)に感銘を受けて品川でこのような市民運動を展開して条例づくりへの道筋ができないものかと模索しています。
ですから「差別解消法の話ができませんでしたが、障がい者差別解消法は条例をつくらいないと活かせませんよ」と帰り際におっしゃった野沢さんの言葉を心強く感じました。別の機会に野沢さんに差別解消法を活かす条例づくりというテーマで講演をお願いしたいと思いまいた。楽しみにとっておきます。
会場には教育委員会の職員、複数の議員の顔もありました。障がい者が暮らしやすい品川をめざそうという思いは共有されたと思いました。野沢さん、育成会さんありがとうございました。(井上八重子)