リニア新幹線沿線住民ネットワークは石原伸晃環境大臣に要望書を提出

2014年3月末、沿線1都6県の知事からリニア中央新幹線の環境への悪影響を懸念する数多くの意見が出された折、環境省よお願いだから十分な審議をして国として「日本の自然環境の砦」を守ってほしいと訴えたにもかかわらずなんと無力な環境省か。 

リニア沿線の市民団体は環境省に対して沿線住民の不安や疑問を積み残して、計画を推進することのないよう国土交通大臣に主張するよう要請の段取りをつけていた矢先に、数時間前というタイミングで環境大臣は国土交通省に意見書を提出してしまいました。なんと姑息なと思あわずにはいられず… 

市民団体からは、さもありなんと覚めた声が聴かれていました。しかし6月5日予定通りに要望書を環境大臣石原伸晃氏あてに提出し、国会内で記者会見を行いました。(最後に要請文を掲載しました。)

7都県の知事は具体的な場所も詳細なデータも不足している、正確な情報とデータを提示することとJR東海に求めました。しかし膨大な意見書にもかかわらずJR東海は1か月後の4月には「環境影響評価書」のまとめを環境省に提出。環境省には専門家の立場で『環境評価書として不十分』とまとめの差し戻しをしてくれると期待をしていましたが、6月5日に意見書を国土交通省へ提出してしまっています。

地下水について「データが少なく、予測が困難」としながらも、河川への影響を最小化する措置を求めたものの、着工までに計画の修正を求めるような具体的な指摘もありませんでした。
緑豊かな自然、きれいな空気や水、静けさといった豊かな環境を将来に引き継いでいくことは、私たちに課せられた重要な義務であり、破壊された自然は元通りにはできません。この環境影響評価はアリバイでしかなかったことが明らかです。 

リニア・市民ネット東京では引き続き市民学習会を開催しリニア計画の反対を訴えます。
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講演と鼎談 
  リニア中央新幹線の法律問題 —リニア訴訟を展望するー
   6月7日(土) 13:00~16:30

第一部
講演:五十嵐敬喜さん 弁護士 日本景観学会会長
  :関島保雄さん  弁護士 圏央道訴訟弁護団
第二部
鼎談と質疑

司会:川村晃生さん 慶應大学名誉教授 リニア・市民ネット代表 

 JR東海がリニア中央新幹線の今秋の着工をめざして着々と準備をすすめています。しかしその最終段階に公表されたアセス準備書は、地下水、生物、残土処理、景観、磁界など、どれもズサンで情報不足なものです。
 このような状況の中で、私たちに法的手段によって対抗する道は開かれているのでしょうか。地上権やトラストなどの対抗措置はどれほどの戦力を持ちえるのでしょうか。そして最終的な手段として、事業認定取消訴訟のような法廷闘争は可能なのでしょうか。
 今回は、公共事業や大規模開発事業の訴訟問題に詳しい二人の専門家をお招きして、法的な対抗手段について学び、話し合ってみましょう。 

会場:たましんRISURUホール(立川市民会館)
   JR中央線立川駅より徒歩13分、JR南部線西国立駅より7分

主催:リニア・市民ネット 連絡先(042-565-7478)
共催:みどり三多摩、東京・生活者ネットワーク
   市民自治をめざす三多摩議員ネットワーク
賛同団体:日本消費者連盟、全国自然保護連合、ガウスネット

 

以下申し入れ書 

2014年6月5日

環境大臣 石原伸晃殿 

リニア新幹線沿線住民ネットワーク
共同代表 天野捷一、片桐晴夫、川村晃生、原 重雄
リニア・市民ネット東京   代表  懸樋哲夫
南アルプス・リニア市民ネット静岡   代表  松谷 清
リニア市民ネット・愛知        代表  小林 収  

      

環境保護の立場から、リニア新幹線の早期着工を認めないよう求める要請書 

本年4月、東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)は、中央新幹線(以下、リニア新幹線)環境影響評価書(以下、評価書)を国土交通大臣に提出しました。これを受けて、環境大臣は本日、国土交通大臣に環境省としての意見書を提出しました。 

JR東海の評価書がいかにも急ごしらえで、知事意見や沿線住民の不安や疑問の声に応えていないことは明らかです。リニア新幹線計画の法的手続きの中で、環境省は、2011年(平成23年)1月14日と同年7月15日に意見を提出しています。前段の中間とりまとめに対する意見では、伊那谷ルートと南アルプスルートの2案に触れ、「大井川源流部には原生自然環境保全地域があるので、極力近づかないようルートを検討すべきである」と述べ、また、工事残土処分場所や地下水への影響の検討についても、環境影響の検討や十分な調査を求めました。 

また後段の意見は、JR東海の中央新幹線計画段階配慮書に対して出されたもので、評価書作成までに、立坑や工事ヤード、車両基地、変電所等鉄道施設の位置・規模を明らかにしたうえで、事業実施区域に含め調査・予測・評価を実施する必要がある」としていました。そして、それが困難な場合は、「必要な環境保全措置を評価書に位置づけたうえで、その環境保全措置の効果を事後調査により確認する必要がある」と述べました。そして、地域住民等の意見聴取の反映について、「意見募集により集まった意見については路線位置の選定等に反映させることに努めるべきである」としました。 

残念ながら上記のような環境省意見が、計画段階配慮書や方法書に反映されたとは言い難く、また、意見募集や公聴会などでの出された市民意見はほとんど無視されたに等しいと言えます。 

環境影響評価法に基づく手続きの上で、建設諾否の判断が下されるまで、私たちが公式に意見を表明する機会はありません。 

立坑やトンネル工事による地下水への影響、工事車両の走行による大気環境への影響、工事残土の処分方法や処分先、動植物の生態系への影響などについて、リニア新幹線がはらむ課題について評価書には具体的な対策がありません。中間駅や非常口、車両基地や変電所の正確な位置も、工事ヤードの詳細な規模も明らかにされていません。 

沿線住民の不安や疑問を積み残して、計画を推進することは誤りです。未曾有の大事業であるリニア新幹線計画だからこそ、環境大臣は、自然環境と国民の健康な生活を守る立場から、引き続き評価書の審査経過を注視するとともに、国土交通大臣に対し、早期着工を図るべきではないとの判断を示すよう要請します。

以上