「避難解除」が進む福島は今 ~國分富夫さんを招いて~
2011年3月に発生した東日本大震災の津波により東京電力福島第一原発は稼働停止に陥り、爆発事故が起こりました。この原発は廃炉が決定していますが、工程は計画通り進まず、すでに7年が経過しています。安倍首相が言う「原発事故は収束した」は嘘です。
東京電力の元会長の勝俣恒久被告(78)、元副社長の武黒一郎被告(72)、元副社長の武藤栄被告(68)の旧経営陣3人は、原発事故をめぐって検察審査会の議決によって業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴され、裁判が行われています。しかし、いずれも無罪を主張しています。原発事故による関連死は福島県内では2211人と認定されています。小児甲状腺がん発症及び疑いの子どもたちの健康被害も深刻です。故郷を追われ避難した人、とどまる判断をした人、いずれも事故がなければこんな状況にはならなかったと悲痛な思いをしています。このような大事故を引き起こしてだれも責任を取らないということは許せません。企業の責任をうやむやにしたら、大きな地震、想像を絶する台風被害、火山の噴火等、自然災害が頻発する日本で、原発再稼働を推進する電力企業は事故が起きても他人事という構造は変わりません。国民はそれを許してはいけない!!と声を大にして叫びたいと思っています。
原発事故を再び起こしてはならない。そのためには原発再稼働を止めて脱原発エネルギーへの転換をしていくという国の政策転換が必要です。
さよなら原発品川アクションは、品川区に在住・在勤する個人や団体が原発電力に依存しないエネルギーで生活する社会をめざすこと、そして東京電力福島第一原発事故被災者に寄り添い、原発事故を風化させないと宣言して2011年9月に会を立ち上げました。
今年は第8回の総会を迎えました。私は微力ながら今年も共同代表を引き受けました。活動方針として毎月11日を基準に、原発事故被災者に寄り添い、事故を風化させない啓発活動や脱原発に取り組む団体と連携して署名行動やパレードなど企画していくことなど活動方針が承認されました。
そして今年の記念講演は原発事故被災者相双の会会長である國分富夫さんを福島からお呼びして「避難解除が進む福島の現状」を伺いました。翌日は神奈川で呼ばれてお話をするということでした。
國分さんから避難指示解除になった地域の様子を具体的にお聞きしました。
2017年4月までに9市町村の5万9140人に帰還宣言が出されたが、帰還した人は8月末で8.8%の5749人に過ぎず、そのほとんどが70歳以上の高齢者と経済的に困難な人たちだといいます。自主避難者への住宅支援の家賃補助の打ち切り、被災仮設住宅の家賃補助まで廃止するという国及び福島県の棄民政策の中、大変苦渋の選択をされているといいます。
役所の意向調査によれば、「戻りたい」と答えた人は、今年の3月に帰還宣言した川俣町で43.9%、飯館村で33.5%、浪江町で17.5%、富岡町で16.0%。これに対して戻った人は川俣町が20.1%、飯館村が5.6%、浪江町が1.3%、富岡町が1.4%に過ぎません。なぜ戻れないかと言えば、原発事故以前は1m㏜以下であった空間線量を国が基準を20m㏜としたまま強制的に帰還宣言することなど認められないという思い、そして土壌汚染はいまだ10万ベクレルという環境の中で子育てはできないという若い世代の判断が背景にあります。
福島では除染土壌の再利用問題が浮上しています。南相馬市、飯館村、二本松市においては既に実証事業が行われています。また放射性物質処理水を海洋に放出するというようなことも取りざたされています。
最後にこの現状を受けて、國分さんの考えは除染土壌再利用・トリチウム海洋放出をさせない決議を地方議会から揚げてほしいという要望を訴えられました。
除染土壌再利用・トリチウム海洋放出は最も重要なことで、東電・国のいうままになれば自然は破壊され安心して住めない日本になってしまうと。放射能で汚された汚染物、放射能物質は福島から、東電の敷地から一歩も出してはならないと話されました。本当に罪深い原子力政策です。
日本で原発事故が起きても、原発再稼働に血眼になる安倍政権と電力企業。他方でドイツは人類の英知を集めても乗り越えられない原発事故という判断から、原発撤廃に舵を切りました。この違いは何なのだろうか。
原発の安全神話は完全に崩壊しました。52基の原発が停止していても日本の電力は賄えました。そして事故対策を青天井に取らない限り原発事故は防げないことが明白になり「原発の電力コストは安い」も根拠をなくしました。原発から作り出される高濃度放射性物質は再生不可能であり、処理する方法も国内置き場所も国は対策を見いだせていません。トイレなきマンションをいつまで作り続けるのでしょうか。原子力村が潤えばよい、後始末はこれから生まれる子どもたちに押し付けて知らん顔する大人たち。こんな国策に国民として、自分事として一緒にNO!を発信しましょう。(井上八重子)