都心上空飛行を強行する国交省に異議あり

2020年4月4日大井町駅上空

2020年3月29日国土交通省は夏ダイヤ運用を開始しました。そして羽田空港への着陸機が東京都心上空を通過する新ルートで、4月3日初めての飛行が実施されました。羽田空港の発着国際便は7割もが欠航しているという状況で、増便を目的にした都心上空飛行の運用の必要はありません。住民へのリスクを押し付けて新ルートを強行する理由を国土交通省は説明すべきです。

品川区をはじめ航路下の住民は、計画撤回に向けて国交省への申し入れをたびたび行ってきたとこですが、運用開始が目前に迫る3月12日にも、国土交通大臣あてに計画中止の要請と記者会見を羽田問題プロジェクト(代表大村究さん)と羽田増便による都心低空飛行計画に反対する東京連絡会(共同代表秋田操さん)が行いました。そして要請には、都心低空飛行ルートの白紙撤回や計画の見直しを求めて活動してきた航路下の住民でつくる24もの市民団体が賛同しています。

要望書では、国土交通省のリスク対策が不十分であることと安全性に懸念があることを指摘し、新ルート運用の強行を立ち止まり計画の見合わせをもとめています。住民による落下物や墜落事故を心配する不安の声だけではなく、IFALPA(国際定期航空操縦士協会連合会)とIATA(国際航空運送協会※主要な国際民間航空の業界団体)が3.45度降下角問題に関する懸念を指摘しており、専門家の警笛をおろそかにすることは許されません。

人口密集地上空で万が一の落下部は大参事になりかねません。つい先日の3月28日、成田空港を離陸直後に全日空機から重さ100グラムのパネルが落下する事故が現実に起こっています。奇跡的に被害者はありませんでしたが、羽田空港離陸直後に川崎コンビナート上空で同じことが起きたら大参事は免れません。落下物対策を充分行っているがゼロにはできないと国交省が言たことが現実におきました。品川区が国に対して十分な落下物対策を求めていますと言い訳したところで絵空事でしかありません。住民にリスクを押し付ける運行強行は撤回すべきです。

国交省は外国人観光客の増加を目的に国際線増便が必要と主張し、そのための方策として都心上空ルートを設定しました。しかし現状では、東京五輪が延期となり、五輪目当ての観光客は皆無となります。さらに世界的な新型コロナ感染爆発に対応するために、政府は入国拒否を73か国へと大幅に拡大しました。羽田空港の国際線発着便の欠航率は3月中旬では4割でしたが、3月28日には7割が欠航しています。大幅減便でもはや、増便のための都心上空新航路の運用を必要とする理由は存在しません。国交省は新ルート運用を立ち止まり、改めて航路下の住民の声に真摯に耳を傾け、専門家を交えて冷静に安心安全な長期的な航空政策を協議する場を設置すべきです。

新型コロナ感染拡大の影響で、集会は自粛、戸別訪問で署名を集められない状況では、品川区で進めている住民投票を求める直接請求署名は、先送りせざるを得ない局面です。しかし、現在署名を集める受任者登録は1500名を超えました。特に2月の試験飛行以来、関心を持つ人が増えています。想像以上に大きな機体に恐怖を感じた、機体を目の当たりにして落下物の不安が襲ってきた、1時間に44便も飛んできたら騒音は我慢できない、等々声が聞こえてきます。国が決めたことであっても、異議があれば声を上げていく。国交省が強行する都心の新飛行ルート運用を覆すのは国民世論の高まりです。品川区で始めたこの住民投票が成功すれば多くの民主的な世論換気につながると信じています。(井上八重子)