「終わりよければすべてよし」を見て思うこと

人の生の終わり、『死』と終末医療の問題を真正面からとらえた羽田澄子監督のドキメンタリー映画『終わりよければすべてよし』を観た。
  
 印象的だったのは日本と欧州の施設の雰囲気の違い。実は身内の介護の必要に迫られ、私は5月の連休に何箇所も特別養護老人ホームを見て廻ったところだった。だから施設の違いが一番気になった。日本の施設は大方が白い壁に殺風景なベットと整理タンス。ちょっとさびしい。でもこの映画に出てくる250人の高齢者が暮らす特養施設は、パッチワークのベットカバーにソファー、そして家族の写真が飾られ自宅にいるのと同じ空間が用意されている。また病院も真っ白な布団や壁の病室とは違い、家族とともにお酒を飲み調理もできる場が用意されている緩和ケア病棟もある。とにかく明るいのに驚く。

特別養護老人ホームに入所するということは自宅で見守れないので入ってもらうという感覚があるが、オーストラリアやスウェーデンの施設は安心して選んで入る居場所ということが映像から伝わってくる。緩和ケア、ターミナルケアの考えが進んでいる。生の終わりをいきいきと暮らしている姿がまぶしい。

だれもが迎える死。そしてどこでその死を迎えるのか。在宅医療で大事なことは、往診をしてくれて24時間連絡が取れる医師や訪問看護師との関係が存在すること。これが在宅介護を支えている。チューブにつながれたまま病院で死を迎えるのか、自宅で身内に看取られて終わりたいか。映画を見ながらターミナルケアと在宅医療の充実がこれからは必要だと感じた。

「最後は畳の上で」とはよく聞く話だが、最近の死亡場所の推移は病院が81%で自宅はなんと13%という結果が厚労省の調査で示されている。
私の祖母は自宅の座敷に何日も横たわっていた。食べられなくなった祖母のために家族みんなで割り箸に巻きつけた脱脂綿に蜂蜜をつけて口元に当てて、最後を看取った。1960年当時はまだ70%の人が自宅で死を迎える時代だった。

岩波ホールで27日まで上映中