女川原発阻止闘争にかかわり、学生時代を仙台で過ごした湯浅さんの思い出の漁村や援魚をした漁場は津波によって軒並み壊滅状態となりました。女川原発はたまたま大事には至らなかったけれど、もし事故になってなら「三陸の漁業」は壊滅したのではないかと湯浅さんはいいます。
女川といえば話はそれますが、私の友人と仲間たちが何度か女川町に支援に行っています。私はもっぱら後方支援ですが、彼からの報告によると人口1万人の女川町では半数が津波で亡くなられ、町の7割が壊滅状態で中心部は全滅。津波被害にあったところには住宅を建てさせないで、高台を切り開いた場所が住宅街とする予定なので、ゼロベースから町を作り直すことになり復興計画は8年かかるともいわれています。漁業の再生が一番の復興でしょうが、港も船も失い、津波被害を逃れた2隻が7月からやっと漁に出始めたとのことです。3つの小学校と2つの中学校は復興計画の予定地に入っているため、それぞれ一校に集められて、毎日町のバスで避難所や仮設住宅から送迎されていいます。子どもを抱えた若い世代は、これから先の生活も考えて未練を残しながらも雇用のない町を出ていく人もいるようです。湯浅さんのお知り合いも避難所生活をしているので、ひょっとすると支援メンバーが女川町でお会いしているかもしれません。不思議な縁を感じました。
福島原発事故はいまだ終息しておらず、次第に海洋への放射能の放出が深刻化しています。海水のみならず、コウナゴなどの水産生物からもヨウ素やセシウムが検出されています。コウナゴの汚染はコウナゴを餌にするさかなに濃縮されて、食物連鎖の可能性を意味します。陸の除染と同じように汚染された水産物は漁獲して海から取り上げて、しかるべき場所で廃棄することが、海の回復を早めることになるそうです。原因をつくった東電と政府がその経費や漁業者への対価を負担して早急に進めるべきです。牛肉の二の舞にならないように、水産庁は危機感を持って対応しないと取り返しのつかないことになりかねません。
南北500㎞に及ぶ三陸沖は世界三大漁場の一つで、その価値を長期的に立って評価しなおすと、その沿岸に放射性物質と核分裂物質(プルトニウム)を作り続ける核関連施設を並べることは自殺行為であり、生物濃縮を考えると世界三大漁場に多くの放射性物質を放出した事実は犯罪的。女川、東通、六ヶ所(再処理工場など)、大間、東海も今回は逃れたけれど、潜在的にはどれも問題なのだということを肝に銘じたい。 (井上八重子)