羽田区民投票条例は委員会採択するも、本会議で逆転否決

品川ネットのメンバーも参加して成功させる会が臨時議会開催を区民の方へ告知宣伝を行いました。(12月23日大井町イトーヨーカドー前)

12月25日開催の品川区議会臨時会は、近隣自治体の羽田問題に取り組む多くの住民と品川区民の期待を裏切る結果となりました。

建設委員会では、区民投票の時期を3か月から1年に延長することや2択を3択に、そして成立要件として投票率を加えるなどの修正案も出され、修正案と原案が同時に審議されました。採決の結果は、修正案と原案がともに賛成4、反対3となり委員会では条例案が採択されました。

ところが本会議では一転、自民党、公明党、自民党系会派の議員が反対し、賛成18、反対21と、逆転否決となりました。
区議会も品川区も「国土交通省に航路の固定化見直しを要望している」ことだけを根拠に、地方自治法で認められる直接請求の権利は認めると言葉では言うものの、実際にはその住民が求める区民投票の権利を21人の議員は認めませんでした。

自民党と公明党は、住民が生活にかかわる政策について自ら主張するという当たり前の「住民自治」を、区民に付託された議員でありながら完全に否定し、「国の政治」を持ち込んで反対したにすぎません。国の政治を代弁するだけならば、区民に付託されて選ばれた品川区の議員の意義が無駄になります。

コロナ禍において条例交付後3か月以内に区民投票を実施するというのは、感染拡大がいまだ終息の兆しもない状況下では困難として、1年延期という修正案も出されました。条例の修正は議会の専権事項であり何ら問題ではありません。請求代表者の陳述にも、よりよい条例として区民投票実現のため条例制定をしてほしいという要望も語られました。ところが建設委員会で発言した自民議員は、原案は2万人がこの条例案で署名したもので大変重いもの、だから修正案には反対だと発言して原案も反対しました。反対をするための詭弁でしかないことは明らかです。

賛成18人の中で6人が賛成討論に立ちました。品川ネットを代表して吉田ゆみこ議員も討論をしました。安藤たいさく議員(共産)、大倉たかひろ議員(自・無)筒井ようすけ議員(品改)くにば雄大議員(無)あべ祐美子(無)。皆さんの討論は、議場の議員すべてに語り掛けられ、賛同を求めるものでした。傍聴席で聞いていて、住民がこの運動を簡単にやり遂げたものではないことを十分理解し、住民の思いを実現したいという思いも伝わってきました。

それだけに、賛成多数の議員を得られなかった結果をしっかり総括しなければなりません。
反対の採決を示した議員のことは決して忘れません。

(井上 八重子)

201225採決表のサムネイル

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

以下、吉田ゆみこ議員の賛成討論

品川・生活者ネットワークを代表して、第99号議案 羽田新飛行経路の運用の賛否を問う品川区民投票条例に対する修正案と、修正部分を除いた原案へ賛成の立場で討論します。

 

本条例案は、羽田新飛行経路に対しての賛否を明らかにするための区民投票を行うための条例です。

区民の皆さんは区民投票を行うために、地方自治法第74条1項に定められた直接請求という制度を使いました。これは国民に等しく保障された自治のための権利ですが、権利行使の要件は大変厳しく定められています。署名集めの期間は市区町村の場合は一カ月だけ、その間に区内の有権者の1/50の署名を集める必要があります。しかも署名集めができるのは受任者として署名簿に自分の住所氏名生年月日を明記した人のみです。署名も、生年月日の記入や捺印まで求められ、集められた署名簿は選管による有権者の署名か否かの審査を経なければいけません。

法的要件の他、署名簿の準備にかかる経費など市民運動としては大きな負担も覚悟しなければなりません。

私自身、かつて東京都に対する直接請求に請求代表者の一人として携わった経験がありますが、この要件の厳しさを前提に直接請求運動に取り組もうという決意自体大変重いものでした。今回の請求代表者の方たちの決意も大変重いものであったろうということは容易に想像ができます。

 

そもそも羽田新飛行経路の実施について、国は「地元の同意を前提とする」と、繰り返し明言してきました。新飛行経路の直下にあたる品川区民は、「地元の同意」とは自分たちの同意のことであると信じ、いつか「同意か否か」を問われる機会があると思っていました。本日冒頭の意見陳述で紹介された子育て中のお母さんのように、「こんな危険な計画は実行されるはずがない、そういう意見を言う場があるに違いない」と信じてこられたと思います。

 

ところが、その期待は裏切られ、一度も意見を言う機会がないまま「地元の同意は得た」として新飛行経路は強行されてしまいました。国が意見を聞かないのであれば、区民として意見を言う場を設定しようではないか、として行われたのが今回の区民投票条例制定のための運動です。

つまり、本来は国が行うと明言してきた「地元の同意を確かめる場」を、区民自らが設定しようとしているにすぎません。それを実現するための公の手段は直接請求しかなく、厳しい要件は承知の上で取り組まれたのだと推察します。

これは、まさに住民自治の行動であり、地方自治体の区議会は区民の自治の行動は尊重すべきと考えます。しかも現在の品川区における法定の最低署名数6802筆の3倍を超える署名が集まったという事実は区議会としても重く受け止めるべきと考えます。

 

第99号議案原案にはいくつかの課題があることも確かです。しかし、その点の不備について請求代表者の意見陳述の中でも認めておられ、議会の中からもその点含めた修正案が出されました。

区民の一番の願いは、羽田新飛行経路について自ら賛否を明らかにする場が実現することです。

この願いの実現を第一に考え、修正案と修正部分を除いた原案に対し賛成することを皆さんに呼びかけて生活者ネットワークの賛成討論といたします。