東電福島原発事故から8年 見えてきた被害の現実
ホームページの更新が滞って、すでに2カ月近くが経過です。この間に統一地方選挙が行われ、品川ネットの現職二人の議員、田中さやかと吉田ゆみこが再選を果たし、喜びもつかの間、選挙の後の作業に追われていました。そして10日間の大型連休に突入。館山に帰って庭の松の手入れや畑仕事にと自然相手にゆったりと過ごしました。
『東電福島原発事故から8年 見えてきた被害の現実』
原発事故の被害が「見えない化」されていることに不安を感じている人はとても多いと思います。
『さよなら原発品川アクション』が標記のトークイベントを5月18日に荏原第五区民集会所で開催しました。講師は国際NGO「FoE Japan」の満田夏花(みつたかんな)幹事長でした。
国際NGO「FoE Japan」は Friends of the Earth International のメンバー団体として日本では1980年から活動を続けています。FoEが地球の友という略であることが分かってすっきりしました。
満田さんから主に、今現在の被災者の現状、小児甲状腺がんの現状、環境省が考えている汚染水・汚染土の扱いについて伺いました。原発電力コストや廃炉の現状などは時間の関係で省略されました。
避難解除がされていますが、居住率10%以下の地域が沢山あります。一部居住率が高いところは、仕事で地域に入る家族がカウントされての結果です。国は空間線量が低下したこと理由に避難解除をしていますが、実態は事故前より線量は高い値ので、健康被害を心配する子育て世代は戻る選択ができずにいます。
「この家は娘さんが茨城に嫁いでいるので帰ってきません。ここも帰らない、事故前に利用していたあそこのスーパーも戻りません。黄色の旗が立っているのが解体の順番を待つ家屋。家屋が解体されると、もっと見通しが良くなります。墓を守りたいと帰ってきたけど、車で買い出しができなくなったらもうここでは生活できませんよ。帰れというなら『生活できる街』を一緒に再生しないと復興とは言いません。」避難地区が解除された富岡町で妻と生活する91歳の男性が淡々とインタビューに答える映像が紹介されました。
役所や学校など利用者不在でも、復興予算が自治体にはたくさん流れ、立派な箱が相変わらず造られています。
避難している方は、生活ができていないのに、住宅支援が打ち切られ、借り上げの公的住宅を追い出され、行く先がなく住み続ける人には2倍の家賃が請求されています。こんなひどいことになっているのを始めて知ったと発言された方がいましたが、このような現実はほとんど報道されません。国と福島県は避難の道を断っておいて、避難者の数は減っていると公言しているのです。許せません。
もう一つ大きな問題は、汚染水とプレコンパックに詰められた汚染土の処理です。汚染水は海洋放出という案に対して当然漁協は猛反対、政府開催の公聴会で44人中42人が反対か慎重の意見を述べたということで、海洋放出は止まっているようです。
汚染土は、福島県外の除染土は・濃度の上限なし・30㎝覆土を行うという簡単な方法で環境省は全国の公共事業に再利用することを目論んでいます。国会審議が行われることもなく環境省が省令を作文するだけということです。恐ろしい状況です。
また福島県内の汚染土については、既に実証実験が始まっている地域もあります。しかしながら、二本松市では放射性汚染土壌再利用実証事業が市民の反対の声で計画がストップし、環境省は請負業者との契約解除に追い込まれました。南相馬市でも常磐自動車道4車線化に汚染土を利用する計画がありますが市民が反対し、南相馬の行政も説明会を開かせないと強硬に反対しているといいます。
今後の展望として、福島県内の黒い袋のプレコンパックは早急に処理しなければなりません。しかし日本全国の公共事業に再利用して、汚染を拡散することは許されません。福島第1原発は廃炉と決定していますが、その道のりも決して順調ではありません。このような世界でも経験したことのない未曾有の原発事故を起こした日本が、その反省もなく原発再稼働に進んでいる社会は異常です。他の電力会社は、東電福島原発事故を他人事としか考えていないように思えます。あれは東電のこと、福島のこと。被害にあった人はたまたま運が悪かった。
そんな社会にしないために、品川アクションの活動は「思いを共にする市民と連帯して今後も継続せざるを得ない」と私は共同代表として最後に挨拶しました。
共同代表を務めた矢吹芳郎さんが4月4日逝去されました。彼は福島県出身であり、脱原発の志なかばでさぞかし無念だったと思います。謹んで哀悼の意を表します。 (井上 八重子)